Concept

DXをより身近なものに

DXをより身近なものに

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、2004年に
スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。
その内容は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」というものです。
言い換えると、
“進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること”。
「Digital Transformation」を直訳すると「デジタル変換」という言葉になりますが、
“変換”というよりも“変革”という言葉が鍵になります。

ただし、DXが及ぼすのは単なる「変革」ではなく、
デジタル技術による破壊的な変革を意味する「デジタル・ディスラプション」。
すなわち、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような
革新的なイノベーションをもたらすものです。

当研究室では、スマホやタブレット、パソコンといったデバイスの取り扱い方法をわかりやすく、
ていねいに指導することで、DXをより身近なものにいたします。

アナログ情報をデジタル化する局所的な
「デジタイゼーション」

プロセス全体もデジタル化する、全域的な
「デジタライゼーション」

結果、社会的な影響を生み出す
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」

すべての企業は、テクノロジー企業に

 社会においてデジタル化が進んだことで、既存の業界の壁が崩れつつあります。今後は、人工知能や、ソフトウェア、クラウド、物流を制するものが、2030年に変革を起こしているともいわれています。
 例えば、アマゾンはヘルスケアに参入し、既に米国ではアマゾンケアとして事業をスタートしています。同社に関してはもはや、ネット通販企業であるとか クラウド事業者であるといった分類は意味を成さないのです。過去にも、総合商社が多業種 へと事業を展開してコングロマリットを形成するというパターンはありました。とはいえ、 儲かっている分野の利益を赤字の分野へと投入し、コングロマリット・ディスカウントの 状態に終わるというのが一般的でした。しかし現在の流れでは、多業種に事業を展開することで、企業間がデータでつながりシナジーを発揮し、コングロマリット・プレミアムを実現するようになっています。
 上流から下流までのビジネスの商流を押さえることで、データ 解析や自動化等により、さらなる価値を創出することができます。事業分野を超えて顧客 データを共通化すれば、例えばコンビニでパンを買った顧客は次に〇〇で〇〇を買う可能性が高いなどといった予測も可能となるでしょう。この際には、個人情報を省いたとして も、個人を認識することはできます。 そのため、先に挙げたアマゾンだけでなく、Google もアップルもマイクロソフトも、従来の業界の枠に収まらない動きを加速させています。
すべての業界がテクノロジーを使わざるを得ない世の中となったことで、かつての業界分類が意味のないものとなりつつあるのです。
 今後は、すべての業界のあらゆる企業が、テクノロジー企業とならなければ生き残れない時代となっていくでしょう。データ活用のキーワードは「おもてなし」日本企業においても多くの経営者が「データは石油である」と語っていますが、ではその〝 石油〟をどう活用すべきなのか、ということまでイメージできる 人は少ないのではないでしょうか。石油は精製することでガソリンやプラスチックになり、 新たな価値が生まれます。これと同様に、データもまた適切なかたちにして活用しなければ新たな価値は生まれません。データ活用のしかたの1つのポイントとなるのが「おもてなし」でしょう。
 例えば、自社のウェブサイトを訪れたユーザーが何回目の訪問なのか、そしてそのユーザーの過去のサイト上の行動はどういったものだったか、こういったデータに応じて表示するメッセージを変える、さらには提供する情報やサービスも変えることで、より満足度を高めることができるはずです。リアル店舗でも、データを上手に活用できればより満足度の高いサービスを顧客に提供できるようになるでしょう。このようにおもてなしを実現するデータ活用のあり方は、すべてのビジネスに当てはまってくるのです。ハードウェア×ソフトウェア×サービスの掛け算によって顧客に価値を提供するのがおもてなしです。ハードウェアとサービスの部分はこれまでも日本企業が得意としてきた分野のはずです。しかし、ソフトウェアの部分が苦手であることから、全体的なおもてなしのレベルが下がってしまいます。
 そこでぜひ見習ってほしいのが、アップルの”引き算の美学”です。ユーザーインターフェイス(UI)を可能な限りシンプルにすることで、アップルの製品やサービスを初めて使う人でも、そして機械が苦手な人でも、誰でも迷わずすぐに使えるようにしているのです。これからの日本企業には、まずは経営層がデジタルの本当の価値を理解して、自社のビジネスモデルを根本から変えていくという強い意志が求められるでしょう。

「マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX」
黒川通彦; 平山智晴; 松本拓也; 片山博順.共著
日本経済新聞出版 2021/8/10 (p.245)より抜粋